媒体更新の作業時間を実データで数えたら、最初の計算式が間違っていた話
自動化サービスの説明で「月◯時間の削減」と書かれているのを見て、その数字がどう出されたか気になったことはないでしょうか。私たちも同じ形式の報告を作ろうとして、最初の試算で「1日あたり26.5時間」という数字を出しました。1日は24時間しかありません。計算式が間違っていたわけです。この記事では、その誤りと、数え直した過程と、意図的に数えなかったものを全部書きます。数字そのものより、その数字がどう作られたかのほうが判断材料になると思うからです。
なぜ作業時間を数えようとしたか
無料トライアルを2週間やって、黙って終わらせると、ただの無料期間で終わります。使った側には「なんとなく楽になった気がする」しか残りません。
「楽になった気がする」と「◯時間浮きました」では、社内での通り方がまったく違います。決裁する人が現場と別なら、後者の紙がそのまま稟議の材料になります。前者では何も動きません。
幸い、反映した内容はすべてログに記録してあります。いつ・誰の・何を・どの媒体に反映したかが残っているので、そこから数えられるはずでした。
以下は、実際に稼働している1店舗の、2026年7月のある2週間ぶんのログから作った数字です。在籍は数十名規模、複数の媒体に掲載している店舗です。
お客様の導入事例ではありません。報告書の作り方を説明するために、手元にある実データを使っています。店舗名・エリア・媒体の組み合わせは出していません。
最初に出た数字がありえなかった
最初に立てた計算式は単純でした。
× 1件あたり40秒
= 手作業だった場合の想定時間
1件40秒というのは、管理画面を開いて対象のキャストを選び、1項目を書き換えて保存するまでの時間です。実際に触っている感覚として、そんなに外れた数字ではありません。
この式で2週間分を計算した結果が、これでした。
| 項目 | 最初の試算 |
| 対象になった反映件数 | 33,338 件 |
| 想定時間(14日間) | 約 370 時間 |
| 1日あたり | 約 26.5 時間 |
1日は24時間です。複数人で分担していたとしても、1店舗の媒体更新に毎日26時間以上かけている店はありません。
この数字は、実データから計算した結果です。作為はありません。それでも間違っています。
もし「370時間の削減」と書いて資料に載せていたら、受け取った側が電卓を叩いた瞬間に信用を失っていました。自動化サービスの数字が大げさに見えるのは、この種のズレが検算されないまま外に出ているからかもしれません。
なぜズレたのか
原因は、ログが「実際に反映した回数」を記録しているのに、それを「人が操作したはずの回数」として扱ったことです。この2つは同じではありません。
いちばん分かりやすいのが出勤情報です。仕組みのほうは45分おきに巡回して、変化があれば反映します。同じキャストの同じ日の出勤情報が、1日のうちに何度も反映されることがあります。開始時刻が変わった、遅刻の連絡が入った、途中で追加出勤が決まった。そのたびに記録が増えます。
ところが手作業なら、1日に何度も同じ子の出勤を入力し直したりしません。朝にまとめて入れて、変更があったときだけ直します。
実際の数字で見ると差は歴然でした。
| 項目 | ログの件数 | 手作業なら |
| 出勤情報の反映 | 20,814 件 | 1,719 回 |
約12倍の開きがあります。ここに40秒を掛けていたので、数字が跳ね上がりました。
自動化の副作用として、記録が増えます。人間なら1回で済ませるところを、仕組みは変化を検知するたびに動きます。その回数をそのまま「削減できた作業」と数えると、やってもいない作業を削減したことにできてしまいます。
どう数え直したか
数える単位を「反映した回数」から、「手作業なら、その管理画面を何回開いたか」に変えました。
項目ごとに、まとめ方が違います。
| 項目 | 数える単位 | 考え方 |
| 出勤情報 | キャスト × 日 × 媒体 | 同じ子の同じ日の出勤は、1媒体につき1回と数える |
| キャスト情報 | キャスト × 日 × 媒体 | 同上 |
| 並び順 | 日 × 媒体 | 店舗単位の操作なので、キャストの人数では割らない |
| 写メ日記 | ログの件数のまま | 1本の日記=1回の転記なので、重複しない |
並び順のところが分かりやすい例です。ログ上は525件ありましたが、並び替えは1人ずつやる作業ではありません。管理画面を開いて全体を並べ替えて保存すれば、何人動かしても1回です。この単位で数え直すと32回でした。
数え直した結果
| 項目 | ログの件数 | 手作業なら開いた回数 |
| 出勤情報の反映 | 20,814 | 1,719 |
| 写メ日記の転記 | 867 | 867 |
| キャスト情報の更新 | 450 | 382 |
| 並び順の同期 | 525 | 32 |
| 合計 | 22,656 | 3,000 |
= 約 33.3 時間(14日間)
= 1日あたり 約 2.4 時間
370時間が33.3時間になりました。10分の1以下です。
そして、この数字のほうが現場の実感と合います。1日2.4時間なら「毎晩、閉店後に2時間くらい更新作業をしている」という状態です。26時間はありえませんが、2.4時間はありそうです。数字が実感と合うかどうかは、検算のいちばん簡単な方法だと思います。
意図的に数えなかった3つ
時間に含めなかったものがあります。含めれば数字は大きくできますが、含めませんでした。理由も書きます。
1. 即ヒメ・接客中の反映(10,682回)
この2週間で最も多かったのが、即ヒメや接客中といったリアルタイムのステータス反映で、1万回を超えています。件数だけ見れば、ここを入れると数字は一気に伸びます。
入れませんでした。理由は、手作業では、この頻度で追随することが不可能だからです。
即ヒメは10分おきに検知して反映しています。人がやるなら、電話を取りながら、キャストの送迎をしながら、10分おきに複数の管理画面を開き続けることになります。誰もやっていません。やっていない作業を「削減できた時間」に計上するのは、水増しです。
そのかわり、回数はそのまま出しています。手作業では届かない部分がここにある、という事実は伝わったほうがいいと考えるからです。時間には換算しない、という扱いにしています。
2. 更新ボタンの自動押下(620回)
掲載順位を保つために、各媒体の更新ボタンを定期的に押しています。2週間で620回でした。
これも時間に入れていません。キャスト単位の作業ではないので、「1名1媒体あたり40秒」という前提と単位が合わないからです。単位の違うものを同じ式で足すと、後から突っ込まれたときに全体が崩れます。
3. ログイン・画面の切り替え・確認の時間
実際に手作業をするなら、管理画面にログインする時間、媒体を切り替える時間、反映されたか確認する時間がかかります。これも入れていません。
入れれば数字は増えますが、1回あたり何秒と言い切れる根拠がありません。根拠を書けない数字は出さない、という方針でやっているので、外しました。
3つとも、含めれば数字は大きくなります。含めなかったのは、大きい数字より、検算に耐える数字のほうが役に立つと考えたからです。
受け取った側が「この計算はおかしいのでは」と思った時点で、その資料は使われません。
この数字の限界
正直に書いておきます。この試算には限界があります。
- 40秒という単価に厳密な根拠はありません。実際に触っている感覚から置いた数字です。慣れた人ならもっと速いですし、媒体によっては遅くなります
- 店舗によって数字は大きく変わります。在籍人数、掲載媒体の数、更新の頻度で変動します。この店舗の2.4時間が、そのまま他の店舗に当てはまるわけではありません
- 期間が2週間だけです。新人の入店が重なった週と、そうでない週では件数が変わります
- 「手作業ならこうだったはず」という仮定の話です。実際にストップウォッチで測ったものではありません
それでも数字を出しているのは、数字が無いと比較のしようがないからです。限界を書いたうえで出すのと、限界を隠して出すのとでは、意味が違うと思っています。
自分の店で数えてみる方法
自動化を検討する前に、いま何時間使っているかを把握しておくと判断が早くなります。ツールを入れなくても、次の式で概算できます。
× 1操作あたりの秒数
= 1日の作業時間
たとえば在籍20人、3媒体、1日1項目(出勤情報だけ)、1操作40秒なら、20×3×1×40秒=40分です。ここに写メ日記の転記と並び順の調整が乗ります。
大事なのは「1日に何度も同じ項目を触っていないか」を正直に見ることです。数え方を膨らませると、自分でも判断を誤ります。今回私たちがやってしまったのが、まさにそれでした。
作業コストの測り方は、ヘブンの出勤情報を他媒体へ自動反映する方法でも別の角度から整理しています。
よくある質問
うちの店だと、どれくらいになりますか
在籍人数・掲載媒体・更新頻度で変わるので、実際に試していただくのが確実です。無料トライアルは、初期設定が終わって実際に反映が始まった日から2週間です。終了時に、この記事と同じ形式で実績をお出しします。
40秒という数字はどこから来ていますか
管理画面を開いて対象のキャストを選び、1項目を書き換えて保存するまでの時間として置いた数字です。厳密な計測ではありません。この単価が違うと思われる場合は、上の「開いた回数」に別の秒数を掛けて計算し直してください。回数のほうは実データです。
即ヒメの1万回を時間に入れないのはなぜですか
手作業では同じ頻度で追随できないからです。やっていない作業を削減時間に計上すると水増しになります。ただし回数は出しています。手作業では届かない部分がそこにある、という事実は伝わったほうがいいと考えているためです。即ヒメの反映が他の項目と設計から違う理由は、ヘブンの即ヒメ・接客中を他媒体と同期する方法に書いています。
失敗した反映は数に入っていますか
入っていません。実際に反映が成功した分だけを数えています。失敗した件数は、報告書には出しませんが、こちらでは内部の確認欄に出しています。失敗が出ていれば原因を確認してから報告を出す運用にしています。
媒体数が少ないと効果も小さいですか
媒体数より、在籍人数と更新頻度のほうが効いてきます。3媒体でも在籍20人で毎日出勤を入れれば1日60回の操作になります。エリアによって使える媒体数が違う話は、風俗媒体5つの対応エリアを実測して一覧にしたにまとめています。
まとめ
- 最初の計算式は間違っていました。1日26.5時間という不可能な数字が出ました
- 原因は、ログの件数を人の操作回数として扱ったことです。自動化すると記録は増えますが、それは手作業の回数ではありません
- 「手作業なら管理画面を何回開いたか」に数え直しました。22,656件が3,000回になりました
- 結果は約33.3時間、1日あたり2.4時間です。最初の10分の1以下ですが、こちらが実感と合います
- 3つを意図的に数えませんでした。即ヒメの反映、更新ボタン、ログインや確認の時間。含めれば数字は増えますが、検算に耐えなくなります
数字は、大きく見せようと思えばいくらでも大きくできます。今回はそれを実演してしまいました。出す側が自分で検算して、おかしいと気づけるかどうかが分かれ目だと思っています。
作業コストの測り方は ヘブンの出勤情報を他媒体へ自動反映する方法、即ヒメの反映が設計から違う理由は ヘブンの即ヒメ・接客中を他媒体と同期する方法 にあります。値付けを間違えた経緯は 月10万円で売ろうとした自社ツールを、2万円台に下げた話 に書いています。エリアごとの対応媒体は 風俗媒体5つの対応エリアを実測して一覧にした で実測値を出しています。 申し込んでから解約までに何が起きるか|導入手順・やらないこと・やめ方 もあわせてどうぞ。