月10万円で売ろうとした自社ツールを、3万円台に下げた話
即ヒメとどけ隊の月額を、10万円から3万円台に改定しました。値下げそのものより、そもそもなぜ10万円という数字を出したのかのほうが問題だったと思っています。判断を間違えた過程をそのまま書きます。
「大手は月20万円らしい」から逆算した
最初に10万円という数字を出したとき、根拠にしたのは伝聞でした。この分野の大手ツールは月額20万円程度だという話を聞いていて、それなら半額にすれば十分に安い、という組み立てです。
今から書けば明らかに雑ですが、当時はそれなりに筋が通っているつもりでいました。相場より半額なら価格優位性がある、という理屈自体は間違っていません。間違っていたのは、その「相場」を自分で確かめていなかったことです。
しかも悪いことに、この数字はLPにも書き、営業の資料にも載せていました。一度どこかに書いてしまうと、それが前提として動き始めます。疑う機会が減るわけです。
実際に調べたら、3倍以上ずれていた
営業を本格的に始める前に、競合サービスの価格を一通り調べました。結果は想定と大きく違いました。
媒体連携に対応したツールの実勢価格は、月額1万円台から3万円台あたりが中心でした。対応媒体数や機能によって幅はありますが、10万円という水準は市場から明確に外れていました。半額どころか、実勢の3倍以上を提示していたことになります。
「大手は20万円」という情報自体が誤りだったのか、特定の条件下での金額だったのかは分かりません。分かったのは、伝聞を一次情報として扱っていたという自分の側の問題です。
「安い」という判断には必ず比較対象が要ります。にもかかわらず、その比較対象を確かめないまま「安い」と名乗っていました。
値付けは自社の原価から積み上げても決まりません。相手が今いくら払っているかから考えるべきものです。この順番を逆にしていました。
値下げは信用を落とすのか
価格を下げると決めるまでに、少し迷いがありました。一度出した金額を大きく下げるのは、足元を見られるのではないか、最初の価格は何だったのかと思われるのではないか、という懸念です。
ただ考えてみると、順序が逆でした。根拠のない高値をつけ続けるほうが、信用を落とします。
この商売は、店舗の管理画面の認証情報を預かって成立します。相手からすれば、信用できない会社に渡せるものではありません。その状況で「なぜこの価格なのか」を説明できない状態は、値下げよりはるかに不利です。
それに、実勢の3倍で提示していれば、検討の土俵にすら乗りません。断られる理由が価格である限り、機能の話は一度も聞いてもらえないわけです。
新しい価格の決め方
改定後は、通常価格を月額39,800円、先着10社に限り29,800円としました。この水準にした理由は2つあります。
ひとつは、実勢価格帯の中に入れることです。1万円台から3万円台という幅の中で、下限に張り付けると「安かろう」の判断をされますし、値下げの余地もなくなります。かといって上限を超えれば、また土俵から外れます。
もうひとつは、この価格で継続的に運用できるかという確認です。媒体側の管理画面は予告なく変わるので、動き続ける状態を保つには継続的な手直しが必要になります。提供側が維持できない価格で契約を取っても、そのうち品質が落ちるだけです。安くすればいいという話ではありません。
先着10社を安くしているのは、単純に導入実績を作るためです。この段階では、価格より「実際に動いている店がある」という事実のほうが価値があります。
価格を下げるときに、削らなかったもの
値下げの方法として、機能を削って価格を落とすというやり方があります。今回それは選びませんでした。特に、即ヒメ・接客中といったリアルタイムのステータス反映は、標準機能のまま残しています。
理由は、この部分こそが一番効く機能だからです。出勤情報や写メ日記は数十分の遅れがあっても実害になりませんが、即ヒメが点いた瞬間は事情が違います。ここが遅れると、そのまま機会損失になります。
調べた限りでは、この種のリアルタイム反映を追加オプション料金として扱っているサービスもあるようでした。であればなおさら、標準に含めたまま価格を下げるほうが差になると考えました。
削ったのは機能ではなく、根拠のない上乗せ分です。
この件から持ち越したこと
反省として残ったのは、値付けの話に限りません。「たぶんこうだろう」で作った前提が、どこかに書かれた時点で疑われなくなるという構造のほうが問題でした。
LPに書き、営業資料に載せ、人に説明する。そのたびに前提は固まっていきます。10万円という数字は、伝聞から出た仮の数字だったのに、いつの間にか決定事項のように扱われていました。
なので今は、外に出す数字には必ず「これは何を根拠にしているか」を添えるようにしています。このブログで作業時間の試算を書くときに、毎回「試算値です」と明記しているのも同じ理由です。根拠を書けない数字は、そもそも出さないほうがいいという判断です。
媒体ごとの対応エリアを調べて公開しているのも、この延長にあります。「主要5媒体に対応」と言えば聞こえはいいのですが、エリアによって実際に使える媒体数は変わります。自社に不利な情報でも、確かめた事実は出しておくほうが、結局は話が早いと思っています。
媒体ごとに対応エリアがどう違うかは、ヘブンの出勤情報を他媒体へ自動反映する方法の中で一覧にしています。自動化を検討する前に確認すべき項目もまとめてあります。